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ライフスタイル

医師のストライキ

#マル秘社会面 l 2020-09-02

玄海灘に立つ虹

ⓒ Getty Images Bank

新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、大学病院で働く専攻医らのストライキがすでに開始から10日以上過ぎるなど長期化しています。コロナで苦労している今の時期になぜ、という疑問が起き、冷ややかな目で見る人もいますが、一方で医師たちがこんなに激しく反発しているのにはそれなりの理由があるのだろうという声もあります。

韓国保健医療人国家試験院によれば、先月31日と今月1日に予定されていた医師の国家試験が、受験者の90%近くが政府の政策に抗議し受験のボイコットにでたために試験が1週間延期されました。またソウル大学病院でも専攻医953人のうち895人が、専門医281人のうち247人が同様に政府の政策に抗議し辞表を提出したということです。

かつてない激しい反発をしている医師たち、その背景には何があるのでしょう。今日は医師たちがストライキをする理由を見ていきたいと思います。

医師が撤回を要求しているのは、ムン大統領が勧めようとしている医大の定員増加、公共医大を開設し、学費などを奨学金で賄う代わりに10年間、地方での勤務を義務付ける制度などの導入です。首都圏との医療格差を減らすのが狙いですが、学生の選抜に市民団体を加える案が明らかにされると、一層反発が強まっています。

ストライキに参加している若い医師たちは

「厳しい競争を勝ち抜き、医学部を6年で卒業した後、週80時間働いているのに、政府は一言の相談もなく、医学部定員を思い通りに増やし、公共医療を口実に公共保健医療大学院(公共医大)を設立すると言っているが、それは果たして公正なのか」

と怒っています。

去年を基準としてソウルで勤務する医師の数は3万359人、京畿道が2万1210人で全国の医師の半分が首都圏に集中しています。国民1000人当たりの医師の数はソウルが3.1人なのに対して慶尚北道では1.4人です。そのため政府は今後10年間で毎年400人ずつ4000人を増員すると言っています。

これに対して医師側は、大韓専攻医協議会は

「政府の趣旨には同意するものの、医師の数を増やすことが問題の根本的な解決策ではない」と主張しています。そして「公共医大を作り10年間の地方勤務を義務化するという案はすでに日本で失敗している政策だ。地方での義務勤務期間が終わるやいなや、医師らは都市に戻り、むしろ地方と都市間の格差はさらに広がるだろう」と言っています。

高麗大学病院の教授はKBSのインタビューに

「同じ医師でも希望者の多い科と少ない科があります。それは医師の数が少ないからそういう現象が起きるのではなく、希望者の少ない科はインフラの保証 が少ないからです。重労働の勤務環境は避けたいと思うからです」と答えています。

今年6月に全国の医大生を対象に行われた調査で全体の22.8%が公共医療分野に従事したいと答えていました。しかし実際に公共医療分野で働く医師は全体の10%にしかなりません。公共医療分野や外科などを志願する医大生がなぜ少ないかは、その分野で働いている医師たちの状況を見れば分かると言います。ストライキに参加している専攻医は

「金を重視するなら最初から公共医療や外科を考えることすらしないでしょう。外科を専攻してイ・クックジョン教授のような医師になりたいと考えている医大生もたくさんいます。しかし夢を放棄するほかない最も大きな理由は、人間らしい生活を放棄しなくてはならないからです。外科の教授は深夜1時に救急患者のコールがかかれば出勤し、8時間の手術のあと、すぐに回診をはじめて入院患者を診て、さらにそのまま午後には外来患者を診て夜7時、8時にようやく退勤されます。そんな生活を覚悟して外科の専門医になっても今度は病院側で外科は金にならないと専門医自体を雇用せず、結局皮膚科などに行くほかない先輩をたくさん見ています」と語ります

実際に外科手術の原価保存率は70%、つまり原価100で、30は損をするということです。そのため小さな病院はそれに耐えられません。ですからそれに耐えられるような大病院を政府が地方に建てて、医療の活性化に政府が投資すべきであり、ただ単に医師の数を増やすだけでは問題の解決にはならないということです。

日本でも7月に新型コロナウイルスへの対応を続けてきた千葉県の病院で、医師や看護師らが待遇を巡ってストライキに踏み切ったことがありました。東京女子医大では看護師400人超が希望退職するというニュースもありました。日本の場合は結局は病院側が折れて、無事事なきを得たようですが、韓国の場合は相手は政府です。

新型コロナウイルス感染拡大の今だからこそ、医師には医療現場を守ってもらいと思いますが、コロナで大変な今だからこそ、命がけで、人一倍苦労している医師の立場も分かる気がします。医師も政府も一歩ずつ譲歩して、解決への道を開いてほしいです。

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