『ゴールを叩く彼女たち』というバラエティ番組が高い人気を呼んでいます。

地上波テレビ局のSBSで毎週水曜日の夜に放送されている、女性サッカーチームの対戦の模様をリアルに見せてくれる番組です。女性サッカーチームといってもプロではなく、芸能人やモデル、アナウンサーなどからなる、サッカーにはほとんど縁がない人たちを集めた複数のチームが、リーグ形式で対戦しています。

去年２月に旧正月特集として放送されたのがスタートで、そのときはパイロット番組（パイロット版）でした。それが第１部が8.4％、第２部が10.2％という高視聴率を記録したため、去年６月に正式に編成されたものです。ちなみに直近の放送の２月９日の視聴率は7.8％。毎週７％台の安定した視聴率を誇っています。

現在はシーズン２で、最初に放送された時とはチームとそのメンバーが少し違いますが、複数のチームがリーグ形式で競う点は同じです。また、シーズン２はサッカーのルールではなくフットサルのルールを適用し、ルールがよりシンプルでわかりやすくなりました。試合時間は前半後半それぞれ10分ずつで、アディショナルタイム（ロスタイム）はありますが、同点で終わっても延長戦はなく、ペナルティーキックで勝敗が決まる形式が取られています。シーズン２では６つのチームが戦っていて、現在３ラウンドまで試合が行われました。残りの試合はチーム当たり２ゲームずつで、最終的に１位～３位までの３チームがスーパーリーグと呼ばれる上位リーグに進出してさらに対戦することになります。

この番組の特徴はひたすら試合、チーム同士の対戦にフォーカスが当てられていることです。しかもどのチームも、監督は、元韓国代表などサッカーのレジェンドと呼ばれる人たちが務めているので、雰囲気は真剣極まりなく、サッカーが笑いを誘う手段にはなっていません。逆にそうした点が、バラエティ番組としてむしろ人気を得ている大きな要因ではないかとみられています。素人が真剣に試合をしている様子を見ていて何が面白いのかと思われるかもしれませんが、サッカーボールを触ったこともなかった芸能界の女性たちが、レジェンド監督の指導のもとでだんだんと上達していく姿は、観る人たちにも達成感を感じさせてくれるという感想が多いです。

オリンピックなどのスポーツの祭典は脚本のないドラマと言われていますが、この番組の選手たちは、競技力は決して高いとはいえないものの、一致団結してチームの勝利に向けし烈に戦う姿は、時に予想もできなかったスリルと感動を与えてくれ、まさに脚本のないドラマになっています。勝ち負けが重要な要素になってはいますが、それを強調するよりは、アマチュアなりに最善を尽くす熱意と相手に負けたくないという適度な執着がまたいい具合に溶け込んでいる内容となっています。さらに、「あんなに練習したのにうまくいかない」、「体がついてきてくれない」などと悩む姿や、意外な選手が意外な活躍を見せたり成長した姿を見せたりする様子は、エリート同士、プロ同士が競争する華やかさとはまた違ったもので、こうした点にも男女を問わず幅広い世代が感情移入しているようです。要するに40人余りにのぼる出演者たちの汗と涙が人気の秘訣だといえるでしょう。