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ライフスタイル

第645話 「世界観」とは何か

2022-03-08

玄海灘に立つ虹

ⓒ SM Entertainment, BIG HIT MUSIC

「世界観」とは、世界に対する見方、観点という意味の哲学的な用語です。ところが最近の若い世代の間では、こうした哲学的な意味ではなく、映画や小説、ドラマ、特にゲームなどで表現される独創的な主張や雰囲気、コンセプトなどの意味で使われるようになっています。


さらに、最近のKPOPアイドルのファンの間では、世界観という用語が日常的に使われるようになっています。はっきりした世界観を持ってデビューした最初のアイドルは2012年にデビューしたEXO(エクソ)です。EXOのメンバーはそれぞれエクソプラネット(太陽系外惑星)という仮想空間からやってきた、超能力を持った人物という設定がされています。それ以降、2015年にはBTSが『花様年華』シリーズで打ち出した世界観(青春をテーマにしていて、青春の不安やもろさ、人生の苦みを知っていく青年としての姿などが描かれている)が大きく注目されたことで、世界観はアイドルグループにとって必須な要素となりました。大手芸能事務所のSMエンターテインメントは、所属するアーティストの世界観を担当するチームを設けているほどで、それだけアイドルグループにとって世界観の確立は重要になっているのです。


ちなみにSMの世界観の中心は「KWANGYA(広野の意)」で、SMに所属するすべてのアーティストが集まる果てしなく広い仮想の空間になります。SMエンターテインメントの関係者は「以前は歌手たちにとって音楽活動がファンと交流できる唯一の手段だったが、歌や存在に世界観が反映されるようになったことで、ファンたちがそこに想像力を加えて2次創作をするなど、相乗効果が起きている」と話しています。


芸能界だけではありません。流通業界でも「世界観」はマーケティングの方法として注目されています。キャラクターなどを作りそのキャラクターにストーリーを持たせ、ブランドイメージを際立たせるのです。商品の優秀性を単に説明するよりも、ストーリーを持たせてアピールする方式です。流通業界ではこれが世界観と呼ばれ、こうしたストーリーをさらにコンテンツやキャラクター事業に発展させ、消費者の忠誠度を高めるための戦略として使われています。もとはゲームの概念だとお話ししましたが、特にゲームに関心が高い世代にアピールする手法です。たとえば食品会社のビングレは「ビングレウス・ト・マシッス(マシッソ=おいしい)」という王子のキャラクターをつくり、製品のプロモーションを行っています。新世界フードが去年「ジェイリラ」というキャラクターを披露したのも世界観マーケティングの一つです。ジェイリラは新世界グループのチョン・ヨンジン副会長の名前(J)とゴリラを合わせたキャラクターで、「火星で生まれた、料理好きなゴリラ」という世界観を持っています。


こうした世界観マーケティングが人気を得ている理由について、世界観を前面に押し出した広告を制作した関係者は、「メディアの変化」を挙げています。「広告は15秒、30秒と短かったため、製品の特徴を表現するのに含蓄を持たせなければならなかったのが、最近ではSNSやユーチューブなどで時間の制約なしに広告を流すことが可能になり、ブランドイメージを消費者にアピールする接点が多様になった」として、そうしたことが世界観という観点で製品のストーリーをユニークに伝える方式が注目されるようになった理由だと話しています。

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