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ピープル

ひとり出版社「ソワダリ」の代表、キム・ドングン

2016-03-08



今、韓国では、韓国人なら誰でも知っている、詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯を描き出した映画「東柱(トンジュ)」が上映され、話題になっています。尹東柱は、日本による植民地支配時代に韓国語で詩を書き、祖国の現実を嘆き悲しんだ若い詩人でした。独立運動に荷担したという罪で逮捕された彼は、祖国独立を目前に控えた1945年2月16日、28歳という若さでこの世を去ります。

映画が公開される1週間前、全国の書店に尹東柱の詩集、初版本が登場しました。といっても、初版本そのものではなく、表紙のデザインから活字体まで初版本と同じ詩集が出版されのです。また、去年11月には、「つつじの花」という作品で知られる詩人、金素月(キム・ソウォル)の詩集も初版本と同じ形で出版され、現在、2冊ともベストセラーとなっています。

韓国の人々に最も愛されている詩人、尹東柱と金素月の作品に新たな息を吹き込み、韓国に初版本詩集ブームをもたらしたのはひとり出版社「ソワダリ」の代表、キム・ドングンさんです。韓国の古い詩集の初版本をそのまま復元してみたいと思った彼は、1年あまりの作業を経て、金素月と尹東柱の詩集を見事に再現したのです。

キム・ドングンさんが出版業に足を踏み入れたのは今から10年前のことでした。半導体の会社で働いていた彼は、営業の仕事に興味がありませんでした。4年間勤めた会社を辞め、出版関連の仕事を始めたキム・ドングンさん。初めて習う企画会議、原稿の依頼、矯正や編集など本が出版されるまで、すべての過程がキム・ドングンさんの興味を掻き立てました。中堅出版社で5年間働きながら、出版のノウハウを身につけたキム・ドングンさんは自分の力で本を作ってみたいと思い、独立を決心します。

2012年、ひとり出版社「ソワダリ」を立ち上げたキム・ドングンさん。大学で日本語と日本文学を専攻した彼が出した最初の本は日本語の学習書でした。本に対する読者の反応に勇気づけられた彼は、外国語シリーズを作っていきました。その中には「星の王子さま」や「不思議の国のアリス」などの初版本を復元した本も含まれていました。そんな時、読者たちから「韓国文学の初版本も復元してくれないか」というリクエストがありました。

1925年に発表された金素月の詩集「つつじの花」の初版本が国内に数冊しか残っておらず、近い将来、その初版本は博物館でしか、それも表紙しか見られなくなるだろうという話を聞いたキム・ドングンさんは初版本と同じデザインと内容の詩集を出版することにしました。金素月と尹東柱の詩集の初版本を見つけるまでの過程は長く、それを復元するのも大変な作業でした。キム・ドングンさんはせっかく復元させた詩集をより特別なものにするアイデアを出します。

復元された金素月の詩集「つつじの花」は封筒に入って送られてきます。封筒には2枚の切手が貼ってあってその一枚は昔の切手を再現したものです。この切手の消印は1925年12月26日、金素月の詩集が初めて発表された日になっています。封筒を開けると、中には詩集と、詩人、金素月の名前で書かれたハガキが入っています。もちろん、ハガキは金素月になりきったキム・ドングンさんが書いたものです。また、最近、出版された尹東柱の詩集にも、復元された初版本だけではなく、尹東柱が友人に残した肉筆の原稿、日本軍に捉えられた彼に対する判決文や写真が入っています。

一人でも多くの読者に、民族詩人と呼ばれる金素月と尹東柱の詩を読んでもらいたいと願うキム・ドングンさん。彼の努力によって蘇った古い詩は、現代の人々の心に昔と同じ感動を伝えています。

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