最高裁にあたる大法院が日本企業に対し、元徴用工への賠償金の支払いを命じる判決を下してから5年が経ちましたが、日本企業が韓国国内に保有する資産の売却は依然、行われておらず、市民団体は大法院が判断を先送りしているとして批判しています。
元徴用工訴訟をめぐっては、日本による植民地時代の徴用被害者について、大法院が、被告企業である日本製鉄と三菱重工業に損害賠償を命じる判決を、2018年の10月と11月にそれぞれ出しました。
その後、両社による賠償が行われないことから、損害賠償訴訟で勝訴した原告が、日本製鉄と三菱重工業が韓国国内に保有している資産を売却するための別な法的手続きを起こし、おととしの9月以降、資産の売却命令が韓国の地方裁判所によって次々と出されました。
ただ、日本企業側がこの決定を不服として抗告したため、売却命令に対する最終判断は、去年の4月に大法院に持ち越されましたが、これまでのところ、大法院は、判断を見送っています。
一部では、大法院は、韓日関係の悪化を懸念して判断を先送りしているとみられています。
大法院が賠償命令を下した最初の判決から5年となる30日、「韓日歴史正義平和行動」などの市民団体は、大法院に対して、日本企業に資産の現金化を命じる決定を出すよう求めました。
市民団体の代表は記者会見で、大法院が1年以上も決定を先延ばしにしていると指摘し、「司法の正義を捨てた」と批判しました。
一方、韓国政府はことし3月、日本企業が支払うべき賠償金を、政府系の財団が肩代わりするという解決策を発表しました。
しかし、一部の被害者や遺族が政府の解決策を拒否していることから、財団は地方裁判所に賠償金を供託する手続きを取りましたが、受理されず、政府による解決策の実施は行き詰まっている状態です。