東京電力福島第1原子力発電所の汚染処理水の海洋放出をめぐり、政府系研究機関である韓国海洋科学技術院と韓国原子力研究院の研究者が、汚染処理水がどう拡散するかシミュレーションを行った結果を、16日に公開します。
両機関の研究者は、韓国防災学会が15日から17日にかけて済州島で開催する学術大会の2日目に研究結果を発表する予定で、放射性物質トリチウムの拡散に関する分析結果などが示されるものとみられます。
韓国海洋科学技術院と韓国原子力研究院は、日本政府が早ければ今春からと見込む東京電力福島第1原発の汚染処理水の海洋放出によって、放射性物質が海でどのように拡散し、環境にどう影響するかについて研究を行ってきました。
シミュレーションの結果は、もともと韓国政府が2月中に発表するとしていましたが、政府が公式に結果を発表するのは適切ではないという判断で、学会での発表の形にしたとの見方が出ています。
これに先立って、韓国のメディアは9日、汚染処理水の海洋放出をめぐり、日本政府が測定対象の放射性物質の種類を大幅に減らし、韓国の専門家から懸念の声が上がっていると報じました。
この報道について、韓国外交部は10日、IAEA=国際原子力機関の要請を受けて再選定した結果だと明らかにしました。
外交部によりますと、汚染処理水の放出計画の安全性を検証しているIAEAの調査団は去年2月、1回目の日本訪問で、測定対象として東京電力が選定した64種類の放射性物質を、推計値ではなく実測値にするよう要請し、これを受けて、東京電力は、測定対象を放射性物質トリチウムを含む31種類に再選定する修正案をまとめ、去年11月に原子力規制委員会に認可を申請したということです。
東京電力とIAEAは去年11月に実施された3回目の視察で、修正案について協議したと発表していて、IAEAは今月か来月に発表する3回目の訪日結果報告書で、修正案に関する検討意見を盛り込む方針です。
外交部は、「政府は、今後も国民の健康と安全を最優先にし、汚染処理水を科学的な観点から、安全かつ国際基準にのっとった方法で処理すべきとの立場を堅持し、対応していく」と強調しました。
★2023年5月1日修正