北韓の平安北道(ピョンアンブクト)寧辺(ヨンビョン)の核施設にある実験用軽水炉をめぐっては、先月、冷却システムから水が流れ出ているというIAEAの報告があり、軽水炉の試運転が行われているとみられていましたが、その後の分析で、放出されているのが温水だということが確認されたということで、IAEAでは、軽水炉が試運転を終え、稼動を始めたとみていて、北韓の核開発の進展に対する懸念が出ています。
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は21日、オーストリアのウィーンで開かれたIAEAの理事会で、「軽水炉の冷却システムから温水が排出されていることが観測された」としたうえで、「軽水炉の試運転が行われているものとみられる」と述べました。
グロッシ事務局長はまた、「温水の排出は、軽水炉が臨界に到達したことを意味する」と説明しました。
今回、稼働が始まったと見られる軽水炉とは別に、北韓は、核兵器の製造に使われるプルトニウムを生産するため、数年前から、寧辺にある5メガワットの原子炉で、使用済み燃料の再処理を行ってきました。
寧辺の原子炉は、北韓の核兵器の製造における中核施設で、ここで原子炉を運転したあとに残る燃料棒を再処理すると、核兵器の原料であるプルトニウムが抽出されます。
グロッシ事務局長は、「実験用軽水炉も原子炉と同じく放射性核燃料からプルトニウムを生産できる」として懸念を示しました。
IAEAは、寧辺に常駐していた調査官らが2009年4月に追放されて以降、北韓の核施設を直接調査することができなくなったため、衛星写真を通じて北韓の核プログラムの監視を行っています。