メニューへ 本文へ
Go Top

ライフスタイル

復活と進化をつづけるファミレス

#マル秘社会面 l 2023-09-13

玄海灘に立つ虹

ⓒ Getty Images Bank
韓国にも日本と同じようにファミリーレストランと呼ばれる店があります。でも日本のように24時間営業をしていたり、手頃な値段で長いができるようなそんなイメージではありません。そして日本のファミレスがその様相を変えてきたように、韓国のファミレスもまた衰退と復活、さらには進化を遂げています。

韓国のファミレスの歴史は1988年、ソウルオリンピックを背景に外食産業が急成長することから始まりました。1988年3月、ソウル新沙洞に「ココス」が開店します。以後アメリカ系の「 TGIフライデーズ」や「OUTBACK STEAKHOUSE(アウトバック・ステーキハウス)」「ベニガンス」「トニー・ローマス」日本系の「すかいらーく」、そして1997年に初の国内ブランド「VIPS」が開店し、ファミレス業界は1990年代から2000年代まで全盛期を迎えます。
そんなファミレスの主な顧客は家族連れと若いカップルでした。気楽にご飯を食べに行くというよりは、誰かのお誕生日や何かに記念日などに、予約をしてちょっと気張っていくというイメージがありました。値段も街の普通の食堂に比べれば高めで、でもインテリアがアメリカ風で洒落ていたり、サラダバーがあったり、お誕生日の人にはお店のスタッフが歌を歌って祝ってくれるなど、特別な日用のレストランという感じでした。週末の予約は取れないなどということもよくありました。
1990年代から20年間外食産業をリードしてきたファミレス業界、売り上げ規模は1990年代は800億ウォン水準だったのが、2000年には1700億ウォンと2倍以上成長し、さらにサッカーのワールドカップの開かれた2002年には3000億ウォンを記録し、2005年には6000億ウォンを突破しました。
また2000年代にはスマートフォンの通信会社との提携により毎月特定日には50%割引が行われるなど、破格のサービスが始まりました。そのおかげでファミレスはそれまでの家族客中心から、大学生のパーテイ、会社の会食の場となっていき、されに人気を得ていきます。ステーキハウスの「OUTBACK」は業界初の100店舗出店を果たし、全盛期には108店舗を誇っていました。

しかしそんなファミレス業界が2010年代になると衰退していきます。20個余りあったブランドが、最終的には「OUTBACK」「VIPS」「TGIフライデーズ」そして「アシュレイ」の4ブランドを残すのみとなりました。
業界の専門家らはファミレス衰退の理由として、景気低迷の長期化による若者の就職難の深刻化と結婚率・出生率の低下、消費者ニーズの変化などを挙げています。主な顧客層だった20〜30代の購買力が就職難により低下、結婚も晩婚化の傾向が強くなったため、比較的価格の高いファミレスに行きにくい人が増えたとの分析です。またメニューに関してもチーズとクリームがたっぷり入った、油で揚げたメニューが多いという点から健康志向の時代の流れに合わなかったともいわれます。さらにコストダウンのために半調理された食材を使用したことで味も似たり寄ったりとなり、さらに海外旅行に出かける人が増えたことから、ファミレスの異国的な雰囲気の魅力も半減していきました。ネットユーザーからは「ファミレスが落ちぶれた理由:コスパ悪過ぎ」「まずくて高いから行かないだけ」「手頃なバイキングレストランに淘汰(とうた)されたね」とコスパの悪さを指摘するコメントが圧倒的に多く見られます。また「2000年ごろまではファミレスがラグジュアリーな文化だと思ってたけど、情報や味覚の発達によりそのお金を払ってまで行くところじゃないと悟った」という意見もありました。
そしてその後の業界の対応は大きく二つに分かれました。大衆化と高級化です。しかし大衆化を選んだ店は失敗におわっています。一方、高級化路線は成功しました。「OUTBACK」は2021年の売上4000億ウォン、前年対比30%以上増加し、2022年にも4100億ウォンを売り上げました。「OUTBACK」は「高くても美味しければお客様は来る」という戦略で冷凍肉を、より高価で管理も難しい冷蔵肉に変え、「トマホーク・ステーキ」「ブラックラベルシリーズ」などの人気メニューを開発しました。またナイフやフォークなどの小物まですべて高級ラインに入れ替えました。また「VIPS」は収益性の低い店舗は果敢に整理し、残りはプレミアム店舗としてリニュアルするという選択と集中戦略をとりました。その結果2018年に61店舗あったのが現在は28店舗となりましたが、経営は黒字転換となりました。コロナ禍以後、急速に回復している外食業界ではファミリーレストランの未来を肯定的に見ています。業界関係者は「3歳から90歳まで、家族そろって食べられ、全国的に店舗を運営している外食業態は西洋料理中ではファミリーレストランが唯一だ。ファミレス全盛期はまた来るだろう」と自信を持って語っています。いまだに週末のレストランに行くと、おじいちゃん、おばあちゃんから下は生まれたばかりの赤ちゃんまで連れた大家族が食事している姿を見かけます。こういう家族そろって食事をする文化が無くならない限り、韓国のファミレスは存在することでしょう。まさに日本とは違ったファミレスの生き残りの道です。

おすすめのコンテンツ

Close

当サイトは、より良いサービスを提供するためにクッキー(cookie)やその他の技術を使用しています。当サイトの使用を継続した場合、利用者はこのポリシーに同意したものとみなします。 詳しく見る >