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ピープル

出版社ブックスフィアの代表、キム・ホンミン

2016-08-23

ソウルから車で1時間ほどの京畿道(キョンギド)坡州市(パジュシ)にあるキョハ図書館。8月14日、日曜日の午後8時、閉ったはずのキョハ図書館にバックパックを背負って、寝袋や毛布を手に、たくさんの人が集まってきました。この日、キョハ図書館で開かれたのは、午後8時から翌日の午前10時まで、図書館で泊りながら、夜通し本を読む、いわば1泊2日の読書会イベント「ジャンル文学復興会」でした。「ジャンル文学」とは、SFやミステリー、ホラー、推理小説などを意味し、このイベントはこうしたジャンルの作品に関する講義を聴き、本を読むためのものです。



「ジャンル文学復興会」イベントを開いたのは、出版社「ブックスフィア」の代表、キム・ホンミンさんです。キム・ホンミンさんは、これまで10年間、120あまりのSFファンタジー、ミステリー、ホラーなどマイナーなジャンルの本を出版し、マニア層から熱い反応を得てきました。

大学で韓国文学を専攻し、小説家を目指していたキム・ホンミンさんは大学を卒業した後、社会科学ジャンルの本を出す出版社に就職しました。出版社に就職しようと思ったのは好きな作家に会えると考えたからでした。ところが、就職2年目に勤めていた出版社が倒産し、2005年、29歳になった時、思いきって、自分の出版社を立ち上げようと決心したのです。

小さな出版社「ブックスフィア」を立ち上げたキム・ホンミンさん。ブックスフィアが出版する最初の作品として彼が選んだのは、ケルト人の伝説を盛り込んだジャン・マルカルの作品「アバロン年代記」でした。ところが、「アバロン年代記」のヒットから3年間、ブックスフィアの本はさっぱり売れず、キム・ホンミンさんに残ったのは借金だけでした。周りから「面白い」、「映画化される」という話を聞いて出版したのですが、まったく注目されなかったのです。当時の経験を通じてキム・ホンミンさんが悟ったのは「面白い」というのはごく主観的なもので、本を出すまではその作品が本当に面白いのかどうか知るすべはないということでした。その時から彼は自分が面白いと思った作品を中心に出版することにしています。また、広告を兼ねて開いていたありきたりのイベントも、ブックスフィアでしかできないようなものに変えていきました。

心機一転した彼が選んだ次の作品は日本の小説家、宮部みゆきの「理由」でした。当時、韓国ではほとんど知られていなかった宮部みゆきの作品を選んだ理由はただ一つ、面白かったからでした。宮部みゆきの推理小説は韓国でも話題になりました。ブックスフィアはこれまで宮部みゆきの38作品を出版し、独特なジャンル専門の出版社というイメージを固めることができたのです。

マニア層の読者を確保したブックスフィアのキム・ホンミンさん。今度は自分にも読者にも面白いユニークなイベントを企画していきます。作品の中に隠されたメッセージを見つけ出す「イースターエッグ」イベント、極限の状況で本を読む写真公募展「エキストリーム・リーディング」、新刊を買った人のために、作者や作品に関する裏話を紹介した別冊付録の制作、作家と読者との出会いなど、ユニークなイベントが続きました。中でも読者に一番人気があるのは、長距離列車に乗って、目的地に着くまでの間、読者に出版を控えている作品の校正を任せる「浪漫読者列車校正」イベントです。このイベントを続けている理由はただ一つ、面白いからです。読者の立場に立って、文学界のアウトサイダーと見なされるジャンルの本を出版し続けているブックスフィア。それだけに出版社に対する読者の信頼と忠誠心は高まり、この信頼は出版界初めての読者ファンドにつながりました。

創立11年目を迎えた出版社、ブックスフィア。ブックスフィアの代表、キム・ホンミンさんはこれからも自分と読者に面白い本を作るために努力していくことでしょう。

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