メニューへ 本文へ
Go Top

ピープル

ソウル市立美術館の館長、キム・ホンヒ

2016-09-06

今、ソウル市立美術館本館を中心に開かれているセマ(SeMA)ビエンナーレ「メディア・シティ・ソウル2016」。セマ(SeMA)はソウル・ミュージアム・オブ・アート=ソウル市立美術館の頭文字を取ってつけられたものです。1年置きに開かれ、9回目を迎えた今年のセマ・ビエンナーレは戦争、テロ、自殺など、現代の地球を取り巻く災難をテーマにした彫刻、映像、サウンド、パフォーマンスなど、さまざまなメディアアート作品を展示しています。ソウル市立美術館が徹底したメディアアート中心のビエンナーレを企画することができるのは、韓国ビデオアートの先駆者とされるアーティスト、ペク・ナムジュンの専門家がいるからです。その専門家とはソウル市立美術館の館長、キム・ホンヒさんです。



2012年から現在まで、ソウル市立美術館を率いてきたキム・ホンヒさん。今では、韓国を代表するメディアアートとフェミニズムアートの第一人者、美術館展示企画の新しい流れを作り出すキュレーターとしてその実力を認められていますが、大学でフランス文学を専攻し、美術とはかけ離れた生活をしていました。そんな彼女が美術に興味を持ったのは、夫の仕事関係でアメリカのニューヨークで暮らすようになってからでした。ニューヨークのミュージアムを訪れ、美術についてあまりにも知らなかった自分に驚き、衝撃を受けた彼女は思いきって大学院に進み、美術史に関する勉強を始めました。美術史を勉強しながら、キム・ホンヒさんは美術作品そのものだけではなく、作品が誕生した時代の歴史、社会、政治的な背景とアーティストの哲学について知ることができました。



美術史の魅力にはまっていったキム・ホンヒさんは、1980年のある日、知人の紹介でビデオアーティスト、ペク・ナムジュンに出会います。レコード盤を割ったり、バイオリンを叩き壊したりする様子をビデオに録って、そのビデオを再生する公演で、「時間とは何か」を考えさせる公演でした。ペク・ナムジュンとの出会いを通じて、ビデオアートの世界に触れたキム・ホンヒさんは、ペク・ナムジュンのビデオアートをテーマに修士論文を書くほど、その魅力に引き込まれました。アメリカ、デンマーク、カナダ、そして韓国で美術史を学び、博士号まで取ったキム・ホンヒさんは1992年からキュレーターと美術評論家として活動し、韓国の美術界に足を踏み入れました。

ビデオアーティスト、ペク・ナムジュンとの出会いとその公演を通じて時代の流れに逆らわず、変化を恐れない勇気を学んだというキム・ホンヒさんは、若いアーティストの可能性に注目しました。そして、2000年、キム・ホンヒさんは、経済的な問題などに悩む若いアーティストを支援するための複合文化空間「サムジ・スペース」の館長に就任します。新世代美術に関心を持っていた彼女は、「サムジ・スペース」に可能性のある若いアーティストのための空間を作りました。美術が変化し、発展していくためには新しい感覚、斬新なアイデアが必要だと考えたからです。

「サムジ・スペース」出身の若いアーティストたちが韓国の現代美術の中心に立つようになると、アーティストと作品の可能性を見抜くキム・ホンヒさんの才能も認められるようになりました。2005年、キム・ホンヒさんは女性としては初めて韓国を代表する美術フェスティバル「光州(クァンジュ)ビエンナーレ」の芸術総監督を任され、その後2012年にはソウル市立美術館の館長に就任しました。ビエンナーレの役割について大きな意味を置いていた彼女が館長に就任したことで、ソウル市立美術館で定期的な「メディアシティ・ソウル・ビエンナーレ」が開かれることになったのです。

キム・ホンヒさんは映画監督「ティム・バートン」展や韓国を代表するアイドル「Gドラゴン」とコラボした美術展示会を開くなど、観客層と現代美術の裾野を広げていくために努力しています。3年前からは会社員を対象にした「ランチボックス」イベントも開いています。抽選で選ばれた会社員はランチタイムを利用して美術館でパフォーマンスを見ながら食事をし、アーティストとも会うことができます。また、希望者の中から選んでキュレーターになってみる機会を与えるイベントを企画したのもキム・ホンヒさんです。

美術館の限界と慣行を乗り越え、美術の大衆化を目指すキム・ホンヒさん。彼女はより多くの人に美術の価値と美しさを伝える美術館、美術に関する情報を共有する美術館、地域に密着していながら世界的な美術館、そして、誰にも開かれた美術館を作っていくために努力しています。

おすすめのコンテンツ

Close

当サイトは、より良いサービスを提供するためにクッキー(cookie)やその他の技術を使用しています。当サイトの使用を継続した場合、利用者はこのポリシーに同意したものとみなします。 詳しく見る >