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ライフスタイル

第668話 映画『閑山:龍の出現』

#アジュンマの井戸端会議 l 2022-08-16

玄海灘に立つ虹


夏は、映画界、映画館にとって「かき入れ時」といわれています。

新型コロナの感染防止のための規制が緩和されたことで、映画館への客足はだいぶ戻ってきています。そのため、映画界も久々に活気づき、この夏は韓国映画も大作揃いなのですが、観客動員は予想に反して振るわないのが実情です。

そんな中で『閑山(韓国語読み:ハンサン):龍の出現』は好調で、7月27日に全国で公開されてから8月15日までの20日間で、損益分岐点の600万人を超えました。


『閑山:龍の出現』は、2014年に公開された『鳴梁(ミョンリャン)(邦題:鳴梁-渦巻く海)』に続く李舜臣(イ・スンシン)3部作のうち第2作に当たります。第1作の『鳴梁』(わずか12隻の船で330隻に達する日本の水軍の攻撃に対抗し戦った「鳴梁大捷(鳴梁海戦)」を描いた作品)が1761万人の観客を動員した大ヒット作であるだけに、第2作の『閑山』にも早くから注目が集まりました。文禄の役における海戦の一つ、 閑山島海戦を描いた作品です。年度から分かりますように、第2作の素材となった戦いが、第1作の戦いより先に起きているため、第2作は第1作の前日譚だと言えます。監督は第1作『鳴梁』と同じ、キム・ハンミン監督です。


韓国と日本の争いを描き、観る人の愛国心を高揚させる内容ではないかと思いきや、韓日間の戦いにフォーカスを当てているというよりは戦いの様子をより客観的に描いているということです。日本を相手にした戦争映画では、日本軍は、残酷だけれでもどこか滑稽に描かれている場合が少なくありませんでした。韓国軍が命を懸けて戦いに臨んでいる姿と対比させる意図があったのかもしれません。しかし閑山島海戦で単独で1500人の水軍を率いた武将・脇坂安治(わきざか・やすはる)は、先の戦いですでに李舜臣の強さを認識しており、朝鮮人を下に見ることなく、李舜臣に勝つために冷静に戦力を分析し、死力を尽くす人物です。『鳴梁』にも脇坂(チョ・ジヌン演)が出ていましたが、全く感じが違います。『閑山』では李舜臣をけん制する脇坂の姿も重点的に描かれているので、映画のかなりの部分が日本軍の視点で展開しているのも興味深い点です。


そのため、日本側の人物もかなりの比重を占めています。特に前述の武将、脇坂安治は、李舜臣(パク・ヘイル演)とほとんど変わらないほどの存在感を発揮しています。ちなみに脇坂安治役は韓国の俳優、ピョン・ヨハンが演じています。もちろんセリフはすべて日本語です。


あと、これはストーリー以外のことになりますが、日本語のセリフだけでなく韓国語のセリフにも字幕が付いているのが、これまでの映画ではあまり例を見ない特徴と言えます。戦争映画では、セリフがよく聞こえるようにするために効果音を抑えることがあり、そうすると臨場感がどうしても落ちてしまいます。そのため、キム監督は、音を抑えず、韓国語にも字幕を入れたため、リアルな戦闘シーンを鑑賞できるということです。

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