小説『深い中庭のある家』
2023-03-16
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2023年は卯年です。ウサギは韓国でどんな意味を持っているのかみてみましょう。
まず、ウサギは、昔から知恵の象徴でした。韓国の昔話では、強くていかつい虎が、小さくて弱いけど知恵を発揮するウサギに負かされるお話が多いです。
朝鮮王朝末期の天才画家、チャン・スンオプが描いた「松鷹図(しょうようず)」には、鷹が襲ってくるのを素早く避けるウサギの姿が描かれています。敏捷で知恵深い動物というイメージです。
人間とウサギの関係は、文字のなかった遠い昔にさかのぼります。人間によって森がなくなり、草原がウサギの生息地となったことで、ウサギの個体数は増えていきました。5万年ぐらい前から、ウサギは、人間の狩りの対象であり、たんぱく質の供給源となり、帽子など衣服の素材や高級な筆をつくるのにも活用されてきました。古墳の壁画などの文化財で、ウサギの姿を見ることができます。
また、朝鮮王朝時代の民画(主に庶民に愛された、普通に家に置かれるなど、生活に溶け込んだ絵画のこと)など昔の絵には、仲睦まじい雄と雌のウサギが描かれた絵もかなりあります。夫婦と家族の仲の良さを象徴しているからです。さらに、月で餅つきをするウサギの姿を想像しながら、昔の人たちは、ウサギのことを無病息災と多産の象徴とも捉えていました。実際にウサギは多産の動物なので、今年はたくさんの若者たちが結婚して子どももたくさん産む、民族繁栄の年になればという期待を語る人もいます。
さらに韓国には、「驚いたウサギの目になる(驚きなどで大きく目を見開く)」、「虎のいない谷でウサギが王様になる(優秀な人がいないところで、そう優秀でない人が勢力を得ることのたとえ)」、「ウサギが自分のおならに驚く(ひそかに行った行為が心配になり、なんでもないことにも驚く)」などという言葉が韓国にはあり、親しみやすい存在でもあります。あと、ことわざでは「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉が韓国にもあるのですが、もともと否定的な意味だったこの言葉が、最近では「二兎を得る」という言葉に変わっているのが興味深いところです。一度に二つの目標を達成できるという考え方の肯定的な変化が反映されたものとみられています。
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