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ライフスタイル

第706話 「アジュンマ」と呼ばれたら不愉快?

#アジュンマの井戸端会議 l 2023-05-02

玄海灘に立つ虹

ⓒ Getty Images Bank「アジュンマ(おばさんの意)」という呼び名について考えさせられる事件が、今年3月にありました。

電車の中で30代の女がナイフを振り回し、他の乗客3人に傷を負わせた事件です。女は、乗客の一人から「アジュンマ」と呼ばれてカッとなったといいます。起訴された女の裁判が最近行われたことで再び注目された事件です。女がどうしてナイフを持ち歩いていたのかについては納得のいく説明は難しいですが、とにかく「アジュンマ」と呼ばれたことが不愉快だったというのです。ちなみに女は35歳です。


「アジュンマ」という言葉が人をそこまで不快にする言葉なのかについて、朝鮮日報がアンケート調査機関に依頼し、30代から60代の女性2008人に尋ねたところ、「不快だ」と回答した年齢層は30歳代が最多で64%、次いで40代で60%でした。50代は500人中223人が、60代でも500人中161人が「不快だ」と答えていて、割合は他の年齢層に比べて少ないものの、不快だという回答は少なくありませんでした。不快だとした回答者には65歳以上の女性も多数含まれていたということです。


では、アジュンマであることを決定づける要素は何でしょうか。一番多かった答えは「外見」で35%でした。結婚したかどうか(27%)、年齢(25%)を上回っています。国立国語院が編纂している標準国語大辞典で、アジュンマ(またはアジュモニ)は、「他人同士で、年配の女性を普通に呼ぶ言葉」となっています。しかしその人の年齢がいくつなのかは住民登録番号でもみない限り正確にはわかりません。ソウル大学心理学科のクァク・クムジュ教授は、「韓国では他人にどう見られているかが重視されているため、どう呼ばれるかは非常にセンシティブな問題だ」と話します。


生体年齢は確実に若くなっていますし、初婚の平均年齢はどんどん遅くなっています。2000年代に入ったばかりの頃は、女性は30歳くらいにはだいたい結婚していて子どももいるだろうと思われても、そう不思議ではない時代でした。その頃は30代がアジュンマと呼ばれてもおかしくはなかったでしょう。ところが、アジュンマという言葉が持つイメージが過去のままでとどまっていることで、現実とのギャップが生じているのかもしれません。


呼び名、その人をどう呼ぶかには、特定の対象に向けた社会的な認識が込められています。そうした意味で、韓国ヤクルトは、ヤクルトアジュンマ(ヤクルトを配達する訪問販売員の女性)という名称をフレッシュマネージャーに変更しました。大韓航空では去年、客室乗務員の呼称を男女区別なくフライトアテンダント(Flight Attendant)に改めています。アメリカの自動車メーカーのフォードは、会長を意味するチェアマン(Chairman)という役職名を、マンを取り除いて「チェア」としました。ゼネラルモーターズも同じです。呼び名からジェンダーを取り除き、ジェンダーニュートラル(ジェンダー中立)の時代へとシフトしつつあるのです。

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