第4回6カ国協議は2005年7月26日から8月7日までと、9月13日から19日まで北京で開かれた。 中国の武大偉外務次官が議長を務め、韓半島の平和と安定、進んでは北東アジア全体の平和と安定のために6カ国は相互尊重と平等の精神にもとづいて、韓半島の非核化について真しかつ実務的な協議を行った。協議は過去3回の会合での共通の理解にもとづいて進められた。 1. 関係各国は、6カ国協議の目標が、平和的な方法によって、検証可能な韓半島の非核化であることを再確認した。 北韓は、すべての核兵器とそれまでの核開発計画を放棄することを約束し、できるだけ早い時期に核拡散防止条約と国際原子力機関(IAEA)の保障措置に復帰することを約束した。 アメリカは、韓半島に核兵器を保有していないこと、また核兵器や通常兵器で北韓を攻撃もしくは侵略する意図がないことを確認した。 韓国は、1992年の朝鮮半島の非核化についての共同宣言にしたがって、韓国に核兵器が存在しないこと、配備しないことを再確認した。 1992年の韓半島の非核化についての共同宣言は、順守され、実施されるべきである。 北韓は原子力の平和的利用の権利を有すると発言した。 他の参加国は、この発言を尊重することを表明し、適当な時期に、北韓に軽水炉を提供することを議論することに合意した。 2. 6カ国は、その関係において国連憲章の原則と目的を順守し、国際関係での規範を順守することを約束した。 北韓とアメリカは、相互の主権を尊重することを承諾し、平和的に共存すること、2国間関係についてのそれぞれの政策にしたがって国交を正常化するための措置を取ることを承諾した。 北朝鮮と日本は、平壌宣言にもとづいて、不幸な過去を清算し残っている懸案を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置を取ることを承諾した。 3. 6カ国は、エネルギー、貿易、投資の分野で、2国間または多国間で経済協力を進めることを約束した。 中国、日本、韓国、ロシア、アメリカは、北朝鮮にエネルギーを支援する意向を表明した。 韓国は、北朝鮮に対して200万キロワットの電力を供給するとした、2005年7月12日の提案を再確認した。 4. 6カ国は、北東アジアの平和と安定を持続させるための共同の努力を約束した。 直接の当事者は、韓半島の恒久的な平和体制について適当な話し合いの場で協議することにした。 6カ国は、北東アジアでの安全保障面の協力を進めるための方策を探していくことに合意した。 5. 6カ国は、「ことば対ことば、行動対行動」の原則にもとづいて、前記の合意を実現するために段階的な措置を取っていくことで合意した。 6. 6カ国は、第5回6カ国協議を2005年11月初旬に北京で開くことで合意した。
軽水炉問題で米朝が対立。 「原子力の平和利用」をめぐって米朝が対立し、協議が決裂するのではないかという推測も出ていたが、米朝対話と韓中両国の仲裁で合意に達する。 ※ 北韓とアメリカの論争の経過。 - 北韓は協議が始まる前から「原子力の平和利用は承認を得る必要がない」と主張したのに次いで、15日の全体会合では、黒鉛減速炉を放棄する代わりに軽水炉を提供するように求めた。 - アメリカは軽水炉の問題は論議する必要がないと主張。 - 北韓は16日の記者会見でアメリカを強く非難し、「軽水炉を提供しなければ核活動を中断するしかない」と表明。 ※ しかし北韓は「アメリカの憂慮を考慮して、軽水炉は共同で管理し、査察を受ける用意がある」と強調。 韓国と中国の仲裁。 韓国は、北韓とアメリカが厳しく対立している中で、協議の決裂を避けるために仲裁者の役割を果たす。 - 米朝の対立が続くと、軽水炉を提供する可能性があることを示唆し、北韓を説得した。 - 鄭東泳統一部長官は閣僚級会談(9月14日)の基調演説で、共同声明の採択に向けて北韓の前向きな対応を促し、北韓の高官に、「アメリカは関係正常化に応じる用意がある」というヒル次官補のメッセージを伝える。 - 潘基文外相がライス国務長官に会い、韓国は中国の案を受け入れるという意向を伝え、アメリカを説得した。 軽水炉問題をめぐって米朝が対立する中で、積極的に仲裁案を示し、「原則についての宣言」が合意されることに寄与。- 「未来の窓」という概念で軽水炉問題の解決策を提示。 議長国の中国はアメリカや北韓と随時接触して説得を続け、戦略的決断を誘導する。 - 中国は5回目の草案を前に、北韓とアメリカに対して、受け入れるか拒否するか、二者択一を要求し、一方で韓国は積極的に草案を支持する意思を表明。 - 李肇星外相がライス国務長官と電話で話し、アメリカの決断を促すなど、アメリカを圧迫した。 ニューヨークタイムズとワシントンポストは、今回の協議は主導的役割を果たした「中国の勝利」だと評価。 共同声明採択 アメリカは18日の首席代表による全体会合で、文案があいまいだと反対する立場を固守し、一方の北韓も譲歩することなく、このままでは協議が決裂するのではないかという見方まであったが、韓国と中国の仲裁で共同声明を採択するに至った。 ※ 北韓とアメリカは軽水炉で対立しながらも2国間対話を継続。 双方は結局、北韓がすべての核を放棄し、核拡散防止条約に復帰、国際原子力機関( IAEA)の査察を受け入れることを前提に、北韓の原子力の平和利用を認めることで妥協した。 北韓とアメリカはともに、協議が決裂した場合にその責任を問われることに負担を感じ、北韓がアメリカの譲歩を受け入れ、軽水炉と関係正常化など、より大きな利益を得るために「完全な核放棄」という戦略的決断を下した。
共同声明の採択、韓半島非核化の目標と原則に合意。 第1~3回の協議では、あいまいな表現にとどまっていた「韓半島の非核化」を、「北韓の核放棄」と連携させて具体性を帯びるようになった。 北韓の国際規範の順守、アメリカの体制保障、南北韓による「韓半島非核化宣言の実行についての内容などを盛り込み、強制力を高める。 すべての核を放棄、北韓の前向きな決断。 社会主義圏の国々が没落した後、北韓にとって核は対米交渉の唯一の支えだったことを考えると、北韓の決断はこれまでになく前向きだと評価できる。 共同声明で関係正常化、エネルギー支援、経済協力など、見返り措置を明記し、「北韓の原子力の平和利用の尊重」と「適切な時期に軽水炉問題について話し合う」という文章を盛り込み、軽水炉の「未来」の可能性を開いておいたことで、北韓が共同声明採択に同意したとみられる。 軽水炉問題はアメリカの譲歩。 アメリカは、北韓の原子力の平和利用を認め、軽水炉提供についても論議できるとして譲歩し、北韓へのエネルギー支援も可能だとする立場を示すなど、以前に比べて大きく譲歩した。 ※ 北韓が軽水炉の運営を共同管理に任せるとしたことが、アメリカの譲歩を引き出す結果につながったとされる。 一方、アメリカは、北韓を攻撃する意思がないことを確認し、北韓の核開発の原因(アメリカの敵対視政策)を解消した。 韓半島平和体制構築の基礎。 韓半島の平和体制について論議するための話し合いの場を設けることで合意し、韓半島の平和体制について本格的な論議が始まる基礎ができた。 米朝、日朝の国交正常化は、韓半島の冷戦構図を解体することに寄与できる。 核問題解決→冷戦構図の解体・韓半島平和体制の構築→北東アジアの安全保障協力構想の実現の基礎ができ上がった。 あいまいな表現、火種は残る。 今回の協議では「言葉対言葉」の合意は成し遂げたが、「行動対行動」に向かうための具体的な履行の順序や手続きは決まらず、依然として米朝間の隔たりは存在している。 - 核放棄の範囲:具体的な対象を決める過程で、北韓とアメリカの対立が予想される。 - 軽水炉の時期:北韓は「先に軽水炉を提供」することを主張しているのに対して、アメリカは「核放棄が先だ」としており、難航が予想される。
韓半島の非核化に合意したことを共同声明で明らかにしたが、体制の保障、経済支援、米朝、日朝国交正常化などの具体的な実践は双方に隔たりがあり、簡単には実現しない見通し。 そういう意味で各論を論議することになる、11月の第5回6カ国協議は難航が予想される。 共同声明を発表し、協議が終了した翌日、北韓が「先に軽水炉を提供すれば、その後に核を放棄する」と主張し、米朝間の力比べが始まった。 しかし、北韓のこうした主張は、共同声明の内容を否定し、6カ国協議の合意事項を無視するための試みだというよりは、次回協議で主導権を握るための方策とみられる。 そのため韓米両国は北韓の主張に敏感に対応することなく、原則を固守する姿勢を堅持。 - ライス国務長官は9月21日、「軽水炉を先に提供するようなことは絶対ない」と言及。 ※ 19日に終わった全体会合で、北韓を除く5カ国が共同声明に明記された「軽水炉の提供」と「適切な時期」について、「北韓がすべての核兵器と核計画を放棄し、核拡散防止条約に復帰、国際原子力機関(IAEA)の安全保障措置を履行した後」を意味するとして、アメリカの意向をおおむね受け入れたことが後から分かった。