平昌オリンピック便り
御賜花・スホランの人気
今回のオリンピックでは、メダルを渡す「メダルセレモニー」のほか、
競技直後の表彰式「ビクトリーセレモニー」で
ぬいぐるみが渡されていることが話題になっています。
このぬいぐるみは、今回のオリンピックのマスコット「スホラン」です。
スホランは、守り神を象徴する白い虎をモチーフにしたもので、
守ること「守護」の韓国語の「スホ」と、トラの韓国語「ホランイ」、
そして、オリンピックの舞台となっているジョンソン一帯に伝わる民謡
「ジョンソン・アリラン」を掛け合わせています。
しかし、セレモニーで贈られるぬいぐるみを見てみると
ただのスホランでなく、
カラフルなアクセサリーがあしらわれた黒い帽子をかぶっています。
これは、「御賜花(オサファ)」といって、
朝鮮時代、科挙に合格した人が、王からもらう贈り物でした。
なかでもスホランのものは、
儒学者・栗谷李珥の御賜花をモチーフにしているということですが、
栗谷李珥は9回科挙を受けて、すべて主席で合格し、
長い朝鮮時代のなかでも科挙において最も優秀であったと言われています。
今回のオリンピックでも、その優秀な儒学者になぞらえることで、
メダリストたちをたたえているのでしょう。
この御賜花をかぶったスホラン。
公式ショップの商品にもなっていますが、
人気が高く、なかなか手に入れることができません。
オリンピック期間と重なった旧正月・ソルラルのプレゼントとして
多く買い求められたほか、
勉強第一の高校生の子どもたちをもつお母さんたちも
「科挙に合格したスホラン」が縁起がいいということで
こぞって買っていったからです。
そのため、定価は3万9000ウォンですが、
取引サイトでは10万ウォンから15万ウォンで取引されています。
こうした商売が横行するのは、いい傾向とは言えませんが、
それでも、マスコットがここまで愛されているということは
今回の大会の誇らしい点の1つと言えるでしょう。
(Photo : Yonhap)									平昌オリンピック便り
またこの種目、 10日に行われた準決勝で4周目にタッチの際に転倒したイ・ユビン選手のところにチェ・ミンジョン選手が滑って行き、手でタッチし滑り出し、半周も差をつけられていたのに見事にトップでゴールインした、あの名場面の種目でもあります。
まさにチームワークの勝利ともいえる場面でしたが、それとは反対にチームワークの悪さが目立った競技もありました。
19日に行われたスピードスケート女子チームパシュートの準々決勝でのことでした。韓国チームはキム・ボルム、パク・ジウ、ノ・ソンヨンの3人の選手が出場しましたが、リンクを6周するこの競技で韓国チームは残り1周の場面でスパートしますが、一番後ろを滑っていたノ・ソンヨン選手が他の2人の選手に大きく遅れをとって決勝ラインを通過し、韓国チームは準決勝進出に失敗しました。
この競技は3人が一列になって滑り最後に決勝ラインを通過した選手のタイムが記録となります。そのためスピードを競いながらもチームメートが互いに遅れないように励ましながら滑るチーム競技です。
競技終了後の記者会見での発言、競技終了後、前を走っていた2人の選手が先に退場に、ノ・ソンヨン選手が一人で泣きじゃくるのをコーチが慰めている場面などがテレビに映り、先にゴールした二人の選手が世間から激しい非難をあびています。
準決勝に進出できなかったことよりも、選手同士の相手を思いやる気持ちの見えてこない、内紛のような様相が悲しいですね。
(Photo : Yonhap)									平昌オリンピック便り
氷の質が好評 
今回のオリンピックでは、氷の質が良いと、選手たちが口を揃えています。
スピードスケート女子の小平奈緒選手も、競技場での初めての練習を終えてから、「リンクの中が暖かいので体を動かしやすいし、氷も固くてコントロールしやすい」と話したと言います。
また同じく初めての練習を終えたフィギュアスケート男子シングルのアメリカのネイサン・チェン選手も、競技場での初めての練習を終えてから、「素晴らしい氷質」だという感想を残しています。
スケルトン男子金メダルを獲得したユンソンビン選手も、「氷の状態がとてもいい。一度も経験したことのない氷質だ。よく管理されている」と話しています。
氷上競技が行われる競技場の氷は、凍らせる過程を250回以上繰り返して作りあげます。例えば5センチの氷をつくるには、0.2ミリの薄い氷をつくる過程を250回繰り返すのです。一度に大量の水を凍らせると、酸素が多くなり、氷の強度が弱くなるからです。
ショートトラックとフィギュアスケートは同じ競技場、カンヌンアイスアリーナで行われますが、二つの競技の氷の条件は異なります。ショートトラックの氷は厚さ3センチ、フィギュアスケートは5センチです。また氷上の温度はショートトラックが氷点下7度以下、フィギュアスケートは氷点下3~4度が最適の温度です。
カンヌンアイスアリーナでは冷凍機3台を使い、氷面の状態を1時間30分で変えられるようにしています。また、リンクの床下に冷却管と温水菅を敷きつめ、氷質をすばやく調整できるシステムをつくりました。
氷質が良いことは、新記録がたくさん出ていることからもわかります。
オランダのスピードスケート男子5000m代表で、自らが持つオリンピック記録を更新したスベン・クラマー選手は1986年生まれの32歳。スポーツ選手として若いとはいえません。年を重ねるほど技が発展するという要素もありますが、競技場の氷質も、彼の記録更新に役に立ったのではないか、というのが専門家らの一致した意見です。
ショートトラックでもオリンピック記録が出ています。女子3000mリレーで、韓国のイ・ユビン選手が転倒しましたが、それを挽回して余りある4分06秒387というオリンピック記録が出ました。平昌オリンピックの氷の質を総括しているのはペ・キテさん。スピードスケートの韓国代表出身で、この17年間、氷の質をよくすることに努力してきました。残りの競技でも、最高の氷で最高の記録が出る大会になりますように。
(Photo : Yonhap)									平昌オリンピック便り
素晴らしい選手の影には愛する家族がいる
素晴らしい選手の影には愛する家族がいます。
17日に行われたショートトラック女子1500mで金メダルを手にしたチェ・ミンジョン選手。13日に行われた500mではメダルに手が届いていたにもかかわらず、他の選手に当たったということで失格となってしまいましたが、500m決勝での衝撃を乗り越え、17日の1500mでは見事金メダルを手にしました。
彼女の鋼鉄のメンタルを支えるのは「お母さんの手紙」です。
金メダルを手にした後のインタビューで強い精神力の秘訣について尋ねた質問に
「もともと結果には振り回されないようにと決心していました。どんな結果が出てもすぐに忘れて次を準備しています。
去年の世界選手権のときに不振だったのですが、結果に執着しないようになりました。母がオリンピックの前に手紙を書いてくれました。苦しい時にはこの手紙に目を通して慰められています。常に最善を尽くしているのだから競技を楽しむようにという内容でした」
と答えていました。
選手のほうからお母さんに電話をかけることもあるようです。
女子スピードスケート3連覇を目指すイ・サンファ選手、イ選手のお母さんは1週間前の12日に娘から電話をもらいました。顔を見たいので選手村まで来て欲しいという内容でした。もともとイ・サンファ選手の出場する14日のスピードスケート女子1000mを応援に行くつもりでしたが、娘からの電話であわてて江稜の選手村に駆けつけまし。面会時間は30分、特別な話はしなかったということです。
その後・イ・サンファ選手は1000mには出場せずに500mだけに出ることを決めました。
そして18日の試合終了後、イ・サンファ選手はインタビューで家族に対してこんなことを言っています。
「オリンピックに両親が初めて来てくれました。両親が会場にいたから緊張したときに両親の顔を思い浮かべて、それが力になりました」
と話していました。
韓国にスケルトンで史上初の金メダルをもたらしたユン・ソンビン選手。フィギュアスケートやショートトラックの選手が幼い頃から訓練を始めるのに比べて、ユン選手は18歳というスポーツ選手として遅い年齢で初めてスケルトンを始めました。この点についてユン選手のお母さんは
「ソンビンが最初にスケルトン競技をすると言ったときには危険そうにもみえたので反対しました。しかしあの子がスケルトンに熱心に集中する姿を見て気持ちが変りました。周りからは非人気種目だし、ソリでメダルが取れるのか、年齢的に遅すぎるスタートではないかと心配の声もありましたが、私はそんな声には耳を貸さずにあのこの選択を信じて支持しました。今あの子に、いつもお前の夢を100%信じて応援していると言ってあげたいです」
と述べていました。
やはりすばらしい選手の影にはそんな娘と息子を信じて、応援する頼もしい家族がいるようです。
(Photo : Yonhap)
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キム・ミンソクが銅メダル獲得 スピードスケートの男子1500m
13日、スピードスケートの男子1500mで銅メダルに輝いたキム・ミンソク選手は、この種目で韓国に初めてのメダルをもたらしました。アジア勢としても初めてのメダルです。
キム選手は今回が初めてのオリンピック、そしてこの1500mがオリンピックデビュー戦でした。キム選手は小学校1年のときにショートラックでスケートを初め、その後スピードスケートに種目を変え、16歳だった2014年に最年少の国家代表になるほど、幼い頃から頭角をあらわしてきたエリート選手でした。そんなキム選手について元国家代表のチェガル・ソンリョルさんは
「キム・ミンソク選手は平昌オリンピックのマスコットのスホランのように勝負欲の強い選手です。すばらしい努力家ですし、誠実に練習する選手でもあります。スピードスケートの1500mはヨーロッパ選手の独断場でした。無酸素状態で持久力を発揮するきつい種目です。彼が銅メダルをとったことで、この種目でアジア選手も勝てることが証明され、その意味も大きいと言えます」
キン・ミンソクの選手の座右の銘は「後悔無しに」だそうです。まさに後悔の無いレースでした。
韓国に帰化した選手たち
今回の平昌オリンピック、韓国は帰化選手が多く5種目に19人の選手が出場します。
種目別にはアイスホッケーが一番多くて男女合わせて10人、バイアスロン3人、アイスダンス1人、リュージュ1人などです。国別にはカナダ国籍の選手が8人で一番多く、
以下、アメリカ5人、ロシア4人などの順です。特に男子のアイスホッケーは 25人の代表選手のうち7人が外国出身です。これについて平昌オリンピックの関係者は
「アイスホッケーでは国籍を移して大会に出場することが一般化しています。韓国の成人選手は200人程度と貧弱なので、国際アイスホッケー連盟が持続的に外国選手を受け入れるよう勧告したりもしました」
と語っています。
大韓体育会(韓国オリンピック委員会)は2010年から体育分野の優秀な人材を特別帰化を通じて積極的に受け入れてきました。
帰化すれば通常は元の国籍を失効するものですが、特別帰化では元の国籍を放棄しなくて済みます。そのため、オリンピック後には自分の国に帰ってしまうのではないか、それぞれの分野である程度の実力のある選手とは言え、自国では代表になれなかった選手、果たしてメダルに手が届くだろうか、と言った否定的な意見も聞こえてきます。
しかしリュージュ女子のエイリン・ブリシェ選手は13日のリュージュ女子一人乗りで、3分06秒400を記録し堂々と7位となりました。ブリシェ選手は2012年の世界ジュニアで2冠を獲得した選手です。
フィギュアスケート団体戦に出場したアイスダンスのカップル、ミン・ユラ、アレクサンダー・ガメリン組。このチームも実は帰化選手です。ミン・ユラ選手は。在米韓国人でアメリカ国籍を放棄して出場、ガメリン選手は特別帰化した選手です。
二人はアメリカで幼い頃から同じコーチの下でスケートを学び,2015年からペアーを組んでいます。11日の団体戦ではユラ選手の衣装が途中ではだけるというハプニングに見舞われ成績は9位でしたが、最後まで息のあった演技を見せていました。
もちろんメダルを取るためという意味はあるものの、ウインタースポーツの底辺の狭い韓国ではこのような特別帰化選手の活躍を通じて人々の関心を高めるという意味も大きく、そういう意味では成果をあげているようです。
また13日のスノーボード女子ハーフパイプで金メダルをとったクロエ・キム選手は韓国系アメリカ人、フィギュアスケートの女子シングルの長洲未来選手は日系アメリカ人です。彼女たちを見ていると国籍はアメリカでも思わず応援したくなりますよね。オリンピックは国と国との対戦ではあるものの、一生懸命に打ち込む選手たちを見ていると国籍なんてどうでもいい、とにかくがんばれと思ってしまいます。
(Photo : Yonhap)
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オリンピック選手村の食堂 
今回の平昌オリンピックは、スキーなどの屋外競技は山岳エリアの平昌、一部ジョンソンで、屋内種目は海岸エリアのカンヌンでおこなわれています。では平昌には体育館のような屋内競技場がないのかというと、そうではありません。竜平ドームと呼ばれる室内氷上競技場があります。オリンピックの期間中、平昌選手村の食堂として使われています。選手村の食堂は、平昌とカンヌンの2ヶ所にあり、平昌選手村の食堂は、3900人余りの選手を24時間体制で受け入れています。
食事を担当している新世界フードは、この1年余りの間、西洋料理やアジア料理をはじめ、ベジタリアンのための料理やハラルフードなど400余りのメニューを開発しました。多様なメニューが、朝、昼、晩、夜食まで一日4回提供されています。平昌選手村の食堂で使用される食材はおよそ1100種類、消費される食材は25-30トンです。また、食中毒を予防するため、ハンバーガーや家禽類はウェルダン、つまり肉の中までよく焼くのが原則で、万が一のために警察や消防隊員が常駐しています。
平昌選手村の食堂で人気のあるのは、果物と、ハンバーガーやステーキなど牛肉類で、韓国の料理では、チャプチェ、チャンチクッス、キムパプが人気メニューだそうです。チャプチェは韓国春雨の炒め料理で、キムパプは海苔巻きのことです。チャンチクッスとは熱い汁の麺料理で、チャンチは宴会やお祝い事を意味し、クッスはそうめんで、文字どおりおめでたい場でもてなされていたことからこう呼ばれています。いまでは普通に食べられていますが、英語で「フェスティバルヌードル」と訳されていることから、縁起がいいと思われているのが人気の秘訣ではないかという話もあります。
平昌選手村の食堂のもっとも大きな特徴は、ベーカリーが充実していることです。遠く離れた工場でパンを焼いて持ってくるのではなく、ベーキングセンターを独自に設け、毎日焼きたてのアツアツのパンが食べられるようになっています。そのために50人のパティシエが勤務しています。ちなみにシェフは150人。いずれも一日4交代制で勤務しています。食堂で働く人たちが一番つらいのは、家族と離れ離れになっていることですが、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ委員長が、「食事について選手たちの苦情がないオリンピックは初めてだ」と感謝の言葉を述べるなど、やりがいを感じているということです。
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2.女子のアイスホッケー南北合同チームの初戦
今回試合の勝ち負けに関係なく、一番注目を集めているのがこの種目でしょう。
女子のアイスホッケー南北合同チームです。
10日に行われた1次リーグの初戦、江陵の会場では文在寅大統領夫妻はもちろん金正恩労働党委員長の妹の金与正党第1副部長、金永南最高人民会議常任委員長も観戦しました。
試合はソチオリンピックで銅メダルに輝いた強豪スイスでした。
結果は8対0の完敗でした。
合同チームの監督を務めるマリー監督は試合前のインタビューでは
「新たに選手が加わったり、新しいシステムを教えたりと、いろいろなことがあったが、初戦に向けて自信を持てている。チームはこれ以上にないくらいうまくまとまっていて満足している」とチームワークに自信をのぞかせていましたが、試合後のインタビューでは、「特別な日でした。最初のオリンピックの試合、それも南北合同チームでの試合、特別でした。今日は負けてしまいましたが、私たちにはまだ試合が残っています。選手たちと共に、次の試合に最善を尽くします」と話していました。
試合の結果とは別に、会場にいた観客はみんな、南北合同チームという事実だけで大きな感動を胸にしたようです
(Photo:Yonhap)									平昌オリンピック便り
開・閉会式場
諸外国での今までのオリンピックでは、開会式に主にサッカー場などが使われていましたが、今回の平昌オリンピックでは、開会式、閉会式を中心に考え貫かれたスタジアムを一から作ることができました。
したがって、今までのよくありがちな長方形の形ではなく、五角形の形にすることによって、全ての観客席で快適に公演が楽しめるようはからいました。
五角形の意味は、もちろんオリンピックを表す五輪、また五行思想(万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説)も表し、東洋哲学の意味も含まれています。
 
聖火台
平昌オリンピックの聖火台は、朝鮮王朝時代に作られた白磁壷、その中でも月を形どった「タル・ハンアリ」をモチーフにして作られました。
タルとは月、ハンアリは壷、甕と言う意味ですので、「月の白磁壷」をイメージして今回の聖火台が作られました。
この「月の白磁壷」は、その様式美から「世の中の全てを抱いている」と称され、世界中でその価値を高く評価されています。
(Photo:Yonhap)									平昌オリンピック便り