韓国政府 対話再開に向けた「次善の策」としての食糧支援へ

韓国の統一部は9日、北韓に対する食糧支援を行うことを公式に発表し、国際社会と緊密に協力しながら推進していくことを明らかにしました。
大統領府青瓦台は、7日の夜の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ大統領の電話会談について「トランプ大統領は、韓国が人道支援として北韓に食料を提供することは時宜にかなっていて、前向きな措置となるだろうと評価し、これを支持した」と明らかにしました。
支援の方式としては、政府対政府、国際機関を通じた供与、民間団体による支援の許可などが検討されているということです。
これまで北韓に対する食糧支援は、南北関係が悪化した際の突破口として作用してきました。
北韓による飛翔体発射実験があったにも関わらず、韓国政府が食糧支援を打ち出したのは、膠着状態となっている米朝間の非核化交渉や南北関係を発展させるための切り札とする狙いがあるものと見られています。
今回も開城(ケソン)の南北連絡事務所を通じて食料支援の意思を伝え、南北間で高官級会談にたどり着くことができれば、南北対話の再開はもちろん、北韓のさらなる非核化措置を導き出す「架け橋」となるため、そうした可能性に韓国政府は期待を寄せているもようです。
実のところ、北韓に対する食糧支援というアイディアは、4月に行われた韓米首脳会談でトランプ大統領から持ち掛けられたものでした。
文大統領が米朝間の非核化交渉再開に向けた方策の一環として、金剛山(クムガンサン)観光や開城工業団地の再開などに触れた際に、トランプ大統領が代案として言及したのが人道支援としての食糧支援でした。
文大統領が食糧支援を推進する意志を明らかにしたのは、当初、構想していた金剛山観光と開城工業団地の再開がアメリカの賛同を得られなかったため、次善の策として提示したものと見られます。
一方、北韓は非核化交渉の条件として制裁緩和を強く主張しているため、食糧支援の提案を受け入れるかどうかは不透明です。
外交部の元関係者は「北韓は以前にも、プライドに関わる問題だとして、韓国側が提案した肥料などの人道支援を断った前例がある。実質的に役に立つ規模でなければ、受け入れるかどうかは未知数だ」との見解を示しました。
また、北韓の軍事挑発に食糧支援で対応することに対する、国内の保守派の反発に対して、どのように説得するかも、今後の政府の課題となる見通しです。
[Photo : YONHAP News]